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フォンイ・Fungの継承に伴い、彼女の物語をお届けします。
つたない物語ではありますが、お付き合いいただければ幸いです。
※紅玉はフォンイの漢字名です。

なお、これはゲーム内の逸話や体験を元にした私の想像する物語であり、
公式の設定とは一切関係ないことを申し添えます。

────────────────────────────────


ふわり
花びらが舞う。
風は無い。
見事に咲き揃った満開の桜の大木。

ふわり、また1枚。
大きく開け放たれた窓の中から、その様子を眺めていた玉蓮は、ぞくりとする。
花びらが舞っただけなのに、なぜ自分はこうも不思議な気持ちになるのか。
全身に鳥肌が立つような震えが走ったのは何故か。
外に出てみたい、そう思った彼女は桜の元まで行くことにした。

春の夜である。
まだ少し肌寒い。
月明かりに照らされた夜の闇の底を、玉蓮は歩いていった。
桜に近づくにつれ、そこに誰かがいるのが分かる。

女が舞っている。
その舞に合わせるかのように、桜が花びらを落としているのであった。
「きれいな女の人・・・。」
玉連に恐ろしいという気持ちはなかった。
どこかで会ったような、また初めて会うような。
舞っている女の顔を見ながら、そう思っていた。

ふと、女が舞をやめた。
「お前も、踊ってみるか。玉蓮」
突然、声をかけられた玉蓮は驚く。
「どうして私の名前を知っているのですか?」
「知っているさ。
お前が生まれる前から、そしてお前が生まれてからもずっとな。
まぁ、会うのはこれが初めてだがね。」

ひょっとしたら、母親の姉妹かもしれない。
そう思いながら、玉蓮が聞いたのは別のことだった。
「どうやったらそんなに上手に踊れるのですか?」
女は微笑んだ。
「お前にも聞こえるだろう。
この春の声が、春が奏でる歌が。
それに耳をすませてみろ。」
玉蓮は、よく分からないと思いながら、目を閉じ、
辺りの音にじっと耳を凝らせてみた。

「聞こえるはずだ、玉蓮。
お前にはその声が、歌がな。
なぜお前はここにきた。」
女の声を聞きながら、玉蓮は思った。
私は・・・、桜が花びらを舞わせたから・・・
それで背中がぞくりとして・・・

突然、体中に震えが走った。
何も聞こえてはこない。
曲などはなっていない。
だが、玉蓮は聞いた。

水が木の中を伝わる音
花が芽吹く音
草が萌え出す音。

石が歌っている。
山が歌っている。
花が舞う。
風が歌い、水が跳ね、
月の光の一粒一粒までもが音色として、目に見えるようであった。

すべての自然
すべての命
ここに在るすべてのもの。

その声を、歌を、玉蓮は聞いた。
耳で聞こえるというものではない。
全身の細胞に、玉蓮というものを形づくる全てのものに
それは流れ込んでくるようであった。

「あぁ」
玉蓮の目からは涙がこぼれていた。
玉蓮自身もまた歌っているのだ。
いつのまにか体が動いていた。
夜の闇に溶け出し、1つの曲になった声に、歌に合わせて
玉蓮は舞った。

女もまた舞い始める。
2人に合わせて、夜に溶け出した歌が、いっそう大きくなるようであった。


いつの間にか、玉蓮は眠っていたようだ。
心配して迎えにきた母親に揺り起こされたときには女の姿はなく、
そこには桜の大木が静かに立っているだけであった。

「あれ!お母さん、ここにいた女の人は!?」
玉蓮が母親に尋ねる。
「女の人?玉蓮、あなたここで1人で眠っていたわよ。」
母親は、玉蓮が寝ぼけてるのだと思った。
「いっぱいいっぱい教えてもらったの!!!
なんか色々分かっちゃった!!!」
「あら、何が分かったの?」
「えっと、えっと・・・。忘れちゃった!」
興奮してまくしたてる玉蓮に、母親は優しく微笑んだ。
「良かったわね。さ、帰りましょう。」
「きれいな女の人でね、何かお母さんに似てたし、
踊りがすっごい上手だったの。」

母親がふと足を止める。
「どうしたの、お母さん?」
母親は、突然、涙を流し始めた。
思い当たることがあったのだ。
「玉蓮・・・。それは紅玉おばあちゃんよ・・・。
あなたに会いにきてくれたのね・・・。」
「紅玉おばあちゃんだったのかぁ。
おばあちゃんって、すごい踊りが上手だったんだね。」
「上手だったわ。
戦いのあとのお酒の席でね、剣を持ったまま舞う姿は本当に綺麗だった。
お母さんはね、ちっとも上手にならなかったわ。
おばあちゃんからは、お前の戦での姿そのものが舞だよって言われたけどね。」
母親はそう言って涙をぬぐった。

「ねぇ、お母さん。私、踊りを習いたい。
おばあちゃんみたいに踊ってみたいの。」
玉蓮はそう言った。
何が起こったのか忘れてしまった玉蓮ではあったが、
あの震えがくるくらいの歓喜の余韻は、まだ続いていた。
この歓喜は何なのだろう。
それをまた味わいたい。
思い出したい。
その思いが、玉蓮を踊りたいという欲求へと押しやるのだ。
踊りたい。
ただ、ただ、踊りたい。


玉蓮・Fung
後に三国一の舞姫と称される彼女の、それが始まりの日であった。


~Fin~

... 続きを読む
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「旅立ちは月を抱いて」にマシラがコメントしてくれた物語を
本文にUPします。


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-masira備忘録-



──今日もまた次代の若者たちが巣立っていった

並ならぬ試練と苦難が待つであろう旅路の門出だのに

その姿のなんと眩しく 頼もしく
その顔のなんと希望に満ちていることか


もう 何度目の見送りだろう

志半ばにして去っていった者たちの想いを繋いで
彼らは代を重ねるごとに逞しく育っていってくれる

だけどその笑顔はやはり見覚えのある
アンタたちの笑顔・・・


ああ このしぶとさが人間なのだろうとつくづく思う
そして何時か必ずあの虚無を吹き飛ばしてくれると信じている


もう到底あの子達の力になる事は出来ないけれど
少しづつ積み上げた魔術のお陰か
まだ暫くカビルハヤーは待っていて呉れそうだ

時代に取り残された老骨は
時代から離れてただ見守って行く事ととしよう──



「あ こらっ! 抱月! 炎!
川に入っちゃいけないって何度言ったらわかるんだい!

まったくもう・・・まーたずぶ濡れじゃないかっ

マーチーローっ! 焚き木集めといでっ!」


やれやれ やっぱり当分くたばれそうに無いね。


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ちょっと修正しました。
マシラといい、翔竜といい
うちは物語が好きで、それを書ける奴らが集まってるよなぁ。
タイトルも勝手につけました。
藤緒・Fung継承に伴う物語の第三夜をお届けします。

まだ
旅立ちは月を抱いて ~前編
旅立ちは月を抱いて ~中篇
をご覧になっていない方は、そちらを先にお読みください。

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夜が紅く染まっていた。
炎と血と、苦痛に悶える叫び声で。
奴らは来た。
恐怖と憎悪、そして悲しみの三重奏を響かせながら。


藤緒は落ち着かない夜を過ごしていた。
昔の光景が脳裏に浮かび上がり、胸が締め付けられる思いだった。

深夜。
眠れないままでは、明日に響く。
そう思い、気分を変えようと窓を開け放つ。
最初は、空の星が小さな黒点で消されていた。
その範囲が徐々に大きく膨らんでゆく。

「フォンイ!起きろ!皆を叩き起こせ!」

「敵だ!!!」

藤緒・Fungの最後の夜が始まった。


彼女の部隊が全員はね起き、武器を持って外に飛び出すと、
視界に見えたのは紅い色だった。
炎によって焼かれる村。
村人たちが次々とネスアバグに襲われていた。

「五鈴!メイフィ!お前たち2人は時空門を開いて村人たちをボーダーへ送れ!」

「フォンイ、翔竜士、雛は2人を援護!」

「十夜!村人達を誘導するよ!お前は向こうだ!」

藤緒は、指示を出すと走り出した。
襲いくるネスアバグを退けながら、村人を誘導する。
五鈴とメイフィが唱える時空門に、逃げ延びた村人は次々と飛び込んでいく。
追いすがるネスアバグはフォンイ、翔竜士、雛燐が
必死になって防戦していた。
十夜もまた、炎が燃え盛る中、村人を助け起こし声を枯らして叫ぶ。

藤緒が、村の東のはずれまで来たときだった。

「きゃぁぁっぁあ」

小さな女の子の悲鳴が聞こえた。
2匹のネスアバグが、逃げ遅れた少女を襲おうとしている。
藤緒は駆け出し、またたく間に2匹共屠り去った。

「大丈夫かい?お嬢ちゃん。」

「お、お、おばちゃん。う、腕が・・・。」

藤緒の左腕から、血がしたたり落ちていた。

「チッ、私としたことが傷を受けちまった。
何、たいした傷じゃないよ。
それより1人かい?家族は?」

「おじいちゃんとおばあちゃんがはやくにげなさいって。」

女の子は今にも泣きそうな声で答えた。

「そうか。それじゃ急いで逃げるよ!」

そう言って、しゃがみこんでいた藤緒が立ち上がろうとしたときだった。
彼女は背後に巨大な殺気を感じて振り返る。

「なんだってこんな奴が・・・」

そこにいたのは、オーバーロードだった。
オーバーロードの爪がゆっくりと振り下ろされる。
普段の藤緒であれば、その爪を易々と回避することができた。
だが、彼女はそうしなかった。
後ろにいる小さな少女を守るために。


十夜が翔竜士たちのところに戻ってきた。

「副長!こちらは大丈夫です!」

「ご苦労!ここを手伝え!」

その時、後方から喚声が上がった。
ボーダーから派遣された軍隊と冒険者たちが到着したのだ。
彼らは着くや否や、次々とデモニカの群れとの戦闘を開始する。

「なんとか間に合ったか。」

翔竜士がつぶやく。
彼らの周りのネスアバグもあらかた片付いていた。
逃げ遅れた村人も彼らの周りにはいない。

「見て!」

時空門を唱え続け、魔力を消費した青白い顔でメイフィが叫ぶ。
彼女が指差した先には、炎の中に大きな影がゆらめいていた。
そこは藤緒が向かった方角だった。

「まさか!?」

翔竜士を先頭に、彼らは走りだした。
そこでは冒険者たちとオーバーロードの戦いが始まっていた。
戦いの混乱の中、地面にうずくまる藤緒と、
それに取りすがって泣いている少女を雛燐が見つける。

「あそこに隊長が!!!」

十夜とフォンイが駆け寄り、藤緒と少女を抱え上げ連れ去る。
安全な場所に運び出し、横たえた藤緒に全員が必死に呼びかける。

「お・・・、お前たちか・・・。
あの子は・・・、無事か・・・い?」

「ええ!ここに!
メイ!五鈴!早く治癒を!」

フォンイが気を失った少女を抱きかかえたまま叫んだ。
メイフィと五鈴は、ずっと治癒の魔法を唱えていたが
藤緒の出血は止まらなかった。

「フォンイ・・・。その子を・・・、頼んだよ・・・。」

「隊長!隊長!もうしゃべらないで!
しっかりして!おかあさん!!!」

「かあさんか・・・。嬉し・・・いね。
そう・・・呼ん・・・でもらえる・・・なんて。」

「私は・・・あの日・・・村が襲われてから
ずっと・・・ずっと・・・闇の中・・・を歩いてきた・・・気がするよ。」

「だが・・・お前が・・・いて・・・くれた・・・
お前が・・・いてくれた・・・から
私は・・・ 闇の中・・・でも、光を失わずに・・・済んだ。
お前が・・・生きてて・・・くれて・・・本当に・・・感謝してる・・・」

「かあさん!かあさん!私も本当の両親をあの日に亡くしてから
かあさんを、ずっとずっとお母さんだと思ってた!
だから、ねぇ、しっかりして!そんなこと言わないで!」

フォンイの目からは大粒の涙があふれていた。

「翔竜士・・・いろいろ・・・世話になったね・・・。
十夜・・・メイ・・・五鈴・・・雛・・・
フォンイ・・・を、まかせたよ・・・。」

「バカ!藤緒!死ぬんじゃねぇ!」

「隊長!」

翔竜士や、他の隊員も口々に叫ぶ。
やりきれない悲しさが、彼らの身をこがし、唇を噛む。

「かあさん・・・か・・・
ふふ・・・ふ・・・」


ダークロードとの戦闘は終結し、デモニカは撤退した。
もうすぐ夜明けの時間だった。
だが、藤緒・Fungはその光を二度と見ることはなかった。


フォンイは旅団を抜け、ボーダーの片隅にある小さな家に移り住んだ。
あの少女を連れて。


あれから5年。
樹上世界にある三国の城をドワーフの使者が訪れ、
デモニカの巣食う地上への道が開かれることになったというニュースは
瞬く間に世界中に広まった。

「マシラ先生。この子を預かって欲しい。」

フォンイは少女を連れて、師であるマシラの元を訪れていた。

「どうしたんだい、突然。
藤緒のことは聞いたよ。
その子のこともね。
また年寄りが生き残っちまったねぇ・・・。」

マシラはそう言うと、天を見上げて嘆息した。

「それで、お前の時のようにその子を預けて
お前はどうしようってんだい?」

「地上へ行く」

5年ぶりに彼女は剣を帯び、旅の装束に身を包んでいた。

「バカな。
お前が行ってどうする。
死にに行くようなもんだ。」

「先生、この子ね。
あの日以来、ずっと笑ったことがないんだ。
ずっとね・・・。
これ以上、奴らに好き勝手させておけば、
世界中にこの子と同じ子供たちが増える。
私の力ではどうにもならないかもしれない。
母さんと同じように、それは闇の道かもしれない。
でもね、この子がいる限り、闇の中でも照らしてくれる。
そして、いつかこの子の笑顔を
奴らから取り戻せる日が来ると信じてる。」

「そうか、親子二代同じ道を行くか・・・。
藤緒もね、お前と同じことを言っていたよ・・・。
分かったよ。好きにするがいいさ。」

そういうと、マシラは少女に向けて優しい笑顔を作る。

「おいで、お嬢ちゃん。
お名前はなんて言うんだい?」

「抱月」

あの日藤緒に助けられた少女はか細い声で答えた。

「月を抱いて暁を待つ・・・か。
これも何かの縁かもしれないねぇ。」

マシラは深い皺をいっそう深くして、少女に微笑みかける。


そのときだった。
戸口に立った人影がフォンイに声をかけてきたのは。

「1人で行くつもりか?」

「隊長!どうしてここに!?」

「隊長代理だ。」

声の正体は翔竜士だった。

「私が夕べ連絡しておいたんだよ。
お前が突然、明日来ると言った後にね。
どうせこうなるとは思っていたんだ。
何年、お前と一緒にいたと思ってるんだい。」

マシラは人の悪そうな笑顔をフォンイに向ける。

「お前が来るはずだから、代理の字は残しておく。
副長はそう言って待っていたんだ。」

「十夜!」

岩のような大男が翔竜士の傍に花崗岩のように立ち尽くしている。

「あんた1人で行けるわけないでしょ。」

「そうよ、それに藤緒隊長からフォンイをまかせるって言われたしね。」

「メイフィ!五鈴!あなたたち、全員・・・生きてたのね・・・」

「簡単に殺さないでよー。殺されても死なないわよ、私は。いたたたた。」

「雛の軽口も相変わらずよ。」

そういってメイフィが雛の腕をつねる。

「そういうことだ。フォンイ隊長。
藤緒の想いを継ぐのはお前しかいない。」

翔竜士はそう言って、口の端を曲げて微笑んだ。

「分かりました。
あなたたち、『死なない覚悟』はできてますか?」

全員がうなずく。
そしてフォンイは抱月を抱きしめ言った。

「必ず生きてあなたのところに帰ってくるわ。」


こうして、彼らは旅立った。
地上が完全に闇に閉ざされてようとも
月の光がその道を照らし続けることを信じて・・・。
... 続きを読む
藤緒・Fung継承に伴う物語の第二夜をお届けします。
(やっぱり二夜では終わりませんでした。)

まだ「旅立ちは月を抱いて ~前編」をご覧になっていない方は
そちらを先にお読みください。

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デモニカの襲撃から1週間後、
藤緒たちは、日常の生活を取り戻していた。
すでに季節は初夏を過ぎ、夏の盛りに入ろうとしている。

「ふぃー、やっぱり仕事の後のビールは最高だね。」

雛燐が手持ちのジョッキを一気に空にしながら言う。
フェイエン平原のとある村。
彼女らはここを拠点とし、活動を行っている。

「あれ?隊長とフォンイは?」

五鈴がテーブルにその日の料理を並べながら尋ねた。

「さぁ、また2人でどっか行ったみたいよ。
なーんか、あやしいんだよねぇ。
もしかして、あの2人できてたりとか・・・。」
いたたたたたたた!」

「雛!」

見れば、メイフィが雛の腕をつねっている。

「あんたそういう軽口はやめたほうがいいわよ。」

「だが、気になる。」

普段は無口な大男が、ふいに口を開いた。

「十夜!あんたまで!」

五鈴が驚いたように、十夜を見つめた。

「違う・・・。隊長のあの目だ。
ときおり、深淵の闇を映したような目をしている。
あの目を見ると、深い深い闇の中を彷徨うような感覚になる。」

「そう・・・。私も思っていた・・・。
特にデモニカと対峙するときのあの人は、
時々、こちらまで恐ろしくなる。
ねぇ、副長。あなたなら何か知ってるんじゃない?
隊長とは1番長い付き合いなんだし。」

メイフィがうながすと、4人の目が翔竜士にそそがれた。

「そうだな。お前達にも話しておいたほうがいいのかもしれん。」

彼はそう言うと、自分のジョッキを傾ける。

「あいつらは、今、ここからナグーで1時間ほどいった山のふもとにいる。
そこには昔、小さな村があったんだ。」

「雛やメイはまだ生まれてなかったのかもしれないな。
あの事件を覚えている者も今では少なくなった。
もう20年ほど前の話だ。
その小さな村がある日、デモニカの集団に襲われた。」

「まさかナゼル村の!?」

十夜がうめくような声を上げる。

「ああ、あの2人はその生き残りさ・・・。」


その日は珍しく快晴だった。
冬のうす曇の毎日から一転し、小春日和と言ってよいくらいの天候に
村人たちは大いに喜んでいた。
春の訪れはまもなくであろう。
すれ違う挨拶に人々は皆、それを口にした。

ナゼル村。
人口約200人くらいのこの村は、近くに良い質の銀や
レアブラックの鉱山があり、春から秋にかけて賑わいを見せる。
冬は雪のため鉱石を運ぶことができない。
そのため鉱山での仕事ができない山の男たちは、
冬の間、ボーダーなどの街で過ごし、春になると村を訪れるのだ。

「藤緒ちゃん、今年はいい男がくるといいね。
あんたも早くお嫁にいかなきゃねー。」

「やだ。おばちゃん、からかわないでよ。」

藤緒はその村で生まれた。
ちょうどその日は、隣の村までの使いを頼まれて出かけるところであった。
雪の道をナグーで約3時間。
朝出発し、用を済ませてから日が落ちる前までには帰れるはずだった。

藤緒が村を出発し、ちょうど隣村についた頃、
突然、村中に、闇に包まれたかのような影が射した。
さっきまで雲はなかったはずだが。
そう思った村人が空を見上げた。

「デモニカだーーーーー。」

誰が叫んだのかも分からなかった。
空を覆いつくすデモニカの大群。
逃げ惑う人々を容赦なくデモニカは蹂躙していった。
爪で切り裂かれ、炎で焼かれる。
辺りは火の海に包まれ、地獄と変わらぬ光景がそこに広がった。

村の様子がおかしい。
藤緒は村の方角から立ち上る黒煙を見ると、ナグーを急がせた。
彼女が村に着くと、そこは焼けただれ、まるで廃墟と化した村が広がっていた。
まだくすぶり続ける火の中を、藤緒は走り回った。

「誰かー!?誰か生きてるーー!?」

煙のため、ときおり咳き込みながら、藤緒は必死に叫んだ。
還ってくる声はない。

そのとき、微かに子供の泣き声が聞こえた。
藤緒は注意深くその声に耳を傾けると、崩れた家の中からであった。
山の中で育ち、力はあるとはいえ、瓦礫を動かすのは容易なことではない。
泣いている子供に声をかけながら、藤緒は少しずつ穴を広げていく。

「フォンイ!!!」

中から出てきたのは女の子だった。
頬はすすで汚れ、体のあちこちに傷を負ってはいたが、
泣いている以外、元気な様子だ。

「藤緒おねーちゃん!!!」

「フォンイ!何があったの!?ねぇ!?何があったのよ!?」

「おっきなばけものがきて、おとうさんがかくれなさいっていったの
フォンイ分からないよ。でてきちゃダメって言うから
ずっとずっとここにいたの。」

フォンイは藤緒にしがみついたまま、泣きじゃくりながら答えた。
何があったのか。
村を襲ったのは何者なのか。
藤緒は自分自身が気を失いかけるのを
フォンイの体温を感じながら必死でこらえた。


「ちょうど俺はその頃、軍にいてな。
小さな村だ。常駐する兵もいない。
連絡がきて、時空門で飛んでも間に合わなかった。
俺らが駆けつけたとき、フォンイを抱える藤緒を見つけたんだ。」

翔竜士はそう言うと、2杯目のビールを注文する。
ビールが届き、それを1口飲むと続けた。

「それから藤緒とフォンイを軍で保護した。
俺も気がかりで色々と世話をしてやったものさ。
ボーダーに帰ってから、しばらくしてからのことだ。
藤緒が軍に入ると言ってきた。
それでフォンイを俺の友人の老魔道士に預けることになった。」

「それから藤緒は軍の中でも、めきめきと頭角を現した。
たいていの男では敵わないくらいにな。
そんなこんながあった後、俺たちは軍を抜けこの旅団を作ったのさ。」

「軍にいたままでは、何かと行動が制限されるからな。
昔の仲間も1人減り、2人減り、そしてお前たちのように
新しく入ったりで今に至るんだよ。
フォンイはマシラ、ああこれが友人なんだが、に育てられた後、
俺らに合流したんだ。」

翔竜士の話が終わると、一同を重い空気が包んだ。

「そんなことがあったんだ・・・。」

普段は軽口を叩いてばかりの雛燐でさえ、
それしか言うことができなかった。


次の日からは普段どおりの生活だった。
ときおり村を襲うリザードマンを狩ったり
村の仕事を引き受けたりしながら、毎日を過ごす。

しばらくは平穏な日々が続いた。
あの日の夜が来るまでは・・・。



続く───
藤緒・Fungの継承に伴い、二夜連続で彼女の物語をお届けします。
つたない物語ではありますが、お付き合いいただければ幸いです。
(二夜では終わらないかもしれません。)

なお、これはゲーム内の逸話や体験を元にした私の想像する物語であり、
公式の設定とは一切関係ないことを申し添えます。

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「いくよ、坊やたち。準備はいい?」

巻き上がる砂煙を眼下に納めながら、凛とした声で彼女は言った。

「イエス、マム」

部隊全員がそれに唱和する。

「雛燐、あんたはこれほどの大規模戦は始めてだったね。
いいかい。乱戦時は指揮官を決して見失うんじゃないよ。
それが意味するものは死だ。分かったかい?」

「は、はい。了解です、隊長。」

彼女、この部隊の隊長である藤緒・Fungは、
もう1度彼らを見回し、声を張り上げる。

「いつもどおりだ。
十夜、あんたは中央を。
翔竜士と雛燐は左翼、私とフォンイは右翼。
メイフィ、五鈴、あんたたちは中央後ろをついてきな。
遅れるんじゃないよ。」

Yo!、了解、指示を受けたものがそれぞれに答える。
彼らの頬は皆、一様に昂揚していた。

「よぅし、それじゃ始めるとするかね。
しっかりやるんだよ、坊やたち。全員突撃!」

喚声を上げながら、7人の戦士たちが丘を駆け下りていく。
戦いが、今、始まったのだ。


ここはプラーナ平原。
通常であれば平和なこの地が、一転して惨禍の舞台へと変わっていた。
怒号と血しぶきが飛び交い、刀槍が落日の余光を受けて輝く。
彼女らが戦っているのは、人間相手ではなかった。

── デモニカ

この樹上世界において、最も忌むべき存在。
それが悪鬼デモニカであった。
太古の昔より、この世界を覆いつくす災厄として
人々は恐れ、逃げ惑い、そして戦い続けてきた。

各国の王は、激しさを増すデモニカの侵攻に軍隊だけでは支えきれぬと判断。
冒険者たちに報奨金を出し、彼らと共に戦うことを決断した。
生まれた街や村を守る者、一攫千金を目指す者、
デモニカ戦で名を挙げ国の重鎮にのし上がろうとする者・・・。
多くの人間が、デモニカとの戦いで傷つき、そして倒れていった。
樹上世界の秩序は、彼らの血と汗とそして屍の上に
あやういバランスを保ちながら今日まで続いてきたのである。


「雑魚は無視しろ!他の奴らに任せても構わん。
私たちが狙うのは、奴らの頭だけだ。
頭さえつぶせば、奴らは撤退する。
いくぞ!デモニカを地平の果てまで追い返せ!」

一団は混戦が続く平原の大地を、風となって駆け抜けていく。

「隊長!右翼前方デモニカヤーグ出現!」

それまで後方を走りながら周囲警戒をしていた五鈴が突然叫ぶ。

「戦闘展開!」

藤緒の指揮により、彼女らはデモニカヤーグの周囲に散開する。
ガツン。
部隊の中でも抜きん出た体躯を誇る十夜がヤーグの鋭い爪を盾で受ける。
並みの男が何十人とかかっても動かせない彼であるが
ヤーグの攻撃には渾身の力を振り絞って耐えねばならなかった。

「フォンイ、雛燐、足を狙え!」

命を受けたフォンイと雛燐が同時に足元に飛び込み、
ヤーグの足に一撃を入れる。
だが、一撃ではヤーグは揺るがなかった。
2人は、二転、三転、尾による攻撃をかいぐぐりながら、
一撃離脱を繰り返し、執拗に同じ場所を斬り続ける。
その間、翔竜士と藤緒は十夜を狙う腕に取り付く。
何度も何度も攻撃を繰り返し、ついに翔竜士の剣が片腕を切り落とした。

だが、ヤーグはまだ止まらなかった。
攻撃を受け続けたことで、十夜の盾にも亀裂が走っている。

「竜巻をかけます!下がってください!」

メイフィが叫ぶと同時に、ヤーグの足元から
ものすごい突風が吹き荒れ、その黒い体に裂傷を与えていく。
大地を揺るがすような音を立て、ヤーグの巨体が崩れ落ちるように倒れる。
雛とフォンイによって斬られた足が、魔法による深手を支えきれなくなったのだ。

「五鈴!みんなに炎の守護を!とどめを刺すよ!」

藤緒を先頭に、翔竜士、雛燐、フォンイ、そして十夜の5人が
倒れたヤーグめがけて突進する。
その体は魔法の力を受け、薄紅色に光っていた。
4人がそれぞれの武器で切りかかる。
藤緒が跳躍し、渾身の力を込めて蹴りを放つと
ヤーグから光があふれ出し、肉体が四散した。

「よし!次だ!」

「隊長。デモニカ撤退していきます。」

フォンイからの報告を受け、藤緒が周囲を見渡すと
デモニカの群れが、現れたときと同じように忽然と消えていくところだった。

「他の連中がうまくやったみたいだね。」


辺りにはむせかえるような血の匂いが漂い、
力及ばず倒れた者たちの間に、疲れ果てた戦士が座り込む。

戦いは終わった。
だが、生き残った誰もが知っていた。
今日の戦いが終わっただけだと。
いつ果てるとも分からぬデモニカとの争いは
勝つのではなく、絶対に負けてはならないものであった。

「よし、みんな無事だね。
今日の地獄はこれで終わりだ。私らも撤退するよ。」

戦士たちが一団、また一団と平原を去っていった。
後に残ったのは静寂。
散っていった者たちの魂を運ぶかのように
一陣の風が、先ほどまでの戦場を駆け抜けていった。



続く───
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