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藤緒・Fung継承に伴う物語の第三夜をお届けします。

まだ
旅立ちは月を抱いて ~前編
旅立ちは月を抱いて ~中篇
をご覧になっていない方は、そちらを先にお読みください。

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夜が紅く染まっていた。
炎と血と、苦痛に悶える叫び声で。
奴らは来た。
恐怖と憎悪、そして悲しみの三重奏を響かせながら。


藤緒は落ち着かない夜を過ごしていた。
昔の光景が脳裏に浮かび上がり、胸が締め付けられる思いだった。

深夜。
眠れないままでは、明日に響く。
そう思い、気分を変えようと窓を開け放つ。
最初は、空の星が小さな黒点で消されていた。
その範囲が徐々に大きく膨らんでゆく。

「フォンイ!起きろ!皆を叩き起こせ!」

「敵だ!!!」

藤緒・Fungの最後の夜が始まった。


彼女の部隊が全員はね起き、武器を持って外に飛び出すと、
視界に見えたのは紅い色だった。
炎によって焼かれる村。
村人たちが次々とネスアバグに襲われていた。

「五鈴!メイフィ!お前たち2人は時空門を開いて村人たちをボーダーへ送れ!」

「フォンイ、翔竜士、雛は2人を援護!」

「十夜!村人達を誘導するよ!お前は向こうだ!」

藤緒は、指示を出すと走り出した。
襲いくるネスアバグを退けながら、村人を誘導する。
五鈴とメイフィが唱える時空門に、逃げ延びた村人は次々と飛び込んでいく。
追いすがるネスアバグはフォンイ、翔竜士、雛燐が
必死になって防戦していた。
十夜もまた、炎が燃え盛る中、村人を助け起こし声を枯らして叫ぶ。

藤緒が、村の東のはずれまで来たときだった。

「きゃぁぁっぁあ」

小さな女の子の悲鳴が聞こえた。
2匹のネスアバグが、逃げ遅れた少女を襲おうとしている。
藤緒は駆け出し、またたく間に2匹共屠り去った。

「大丈夫かい?お嬢ちゃん。」

「お、お、おばちゃん。う、腕が・・・。」

藤緒の左腕から、血がしたたり落ちていた。

「チッ、私としたことが傷を受けちまった。
何、たいした傷じゃないよ。
それより1人かい?家族は?」

「おじいちゃんとおばあちゃんがはやくにげなさいって。」

女の子は今にも泣きそうな声で答えた。

「そうか。それじゃ急いで逃げるよ!」

そう言って、しゃがみこんでいた藤緒が立ち上がろうとしたときだった。
彼女は背後に巨大な殺気を感じて振り返る。

「なんだってこんな奴が・・・」

そこにいたのは、オーバーロードだった。
オーバーロードの爪がゆっくりと振り下ろされる。
普段の藤緒であれば、その爪を易々と回避することができた。
だが、彼女はそうしなかった。
後ろにいる小さな少女を守るために。


十夜が翔竜士たちのところに戻ってきた。

「副長!こちらは大丈夫です!」

「ご苦労!ここを手伝え!」

その時、後方から喚声が上がった。
ボーダーから派遣された軍隊と冒険者たちが到着したのだ。
彼らは着くや否や、次々とデモニカの群れとの戦闘を開始する。

「なんとか間に合ったか。」

翔竜士がつぶやく。
彼らの周りのネスアバグもあらかた片付いていた。
逃げ遅れた村人も彼らの周りにはいない。

「見て!」

時空門を唱え続け、魔力を消費した青白い顔でメイフィが叫ぶ。
彼女が指差した先には、炎の中に大きな影がゆらめいていた。
そこは藤緒が向かった方角だった。

「まさか!?」

翔竜士を先頭に、彼らは走りだした。
そこでは冒険者たちとオーバーロードの戦いが始まっていた。
戦いの混乱の中、地面にうずくまる藤緒と、
それに取りすがって泣いている少女を雛燐が見つける。

「あそこに隊長が!!!」

十夜とフォンイが駆け寄り、藤緒と少女を抱え上げ連れ去る。
安全な場所に運び出し、横たえた藤緒に全員が必死に呼びかける。

「お・・・、お前たちか・・・。
あの子は・・・、無事か・・・い?」

「ええ!ここに!
メイ!五鈴!早く治癒を!」

フォンイが気を失った少女を抱きかかえたまま叫んだ。
メイフィと五鈴は、ずっと治癒の魔法を唱えていたが
藤緒の出血は止まらなかった。

「フォンイ・・・。その子を・・・、頼んだよ・・・。」

「隊長!隊長!もうしゃべらないで!
しっかりして!おかあさん!!!」

「かあさんか・・・。嬉し・・・いね。
そう・・・呼ん・・・でもらえる・・・なんて。」

「私は・・・あの日・・・村が襲われてから
ずっと・・・ずっと・・・闇の中・・・を歩いてきた・・・気がするよ。」

「だが・・・お前が・・・いて・・・くれた・・・
お前が・・・いてくれた・・・から
私は・・・ 闇の中・・・でも、光を失わずに・・・済んだ。
お前が・・・生きてて・・・くれて・・・本当に・・・感謝してる・・・」

「かあさん!かあさん!私も本当の両親をあの日に亡くしてから
かあさんを、ずっとずっとお母さんだと思ってた!
だから、ねぇ、しっかりして!そんなこと言わないで!」

フォンイの目からは大粒の涙があふれていた。

「翔竜士・・・いろいろ・・・世話になったね・・・。
十夜・・・メイ・・・五鈴・・・雛・・・
フォンイ・・・を、まかせたよ・・・。」

「バカ!藤緒!死ぬんじゃねぇ!」

「隊長!」

翔竜士や、他の隊員も口々に叫ぶ。
やりきれない悲しさが、彼らの身をこがし、唇を噛む。

「かあさん・・・か・・・
ふふ・・・ふ・・・」


ダークロードとの戦闘は終結し、デモニカは撤退した。
もうすぐ夜明けの時間だった。
だが、藤緒・Fungはその光を二度と見ることはなかった。


フォンイは旅団を抜け、ボーダーの片隅にある小さな家に移り住んだ。
あの少女を連れて。


あれから5年。
樹上世界にある三国の城をドワーフの使者が訪れ、
デモニカの巣食う地上への道が開かれることになったというニュースは
瞬く間に世界中に広まった。

「マシラ先生。この子を預かって欲しい。」

フォンイは少女を連れて、師であるマシラの元を訪れていた。

「どうしたんだい、突然。
藤緒のことは聞いたよ。
その子のこともね。
また年寄りが生き残っちまったねぇ・・・。」

マシラはそう言うと、天を見上げて嘆息した。

「それで、お前の時のようにその子を預けて
お前はどうしようってんだい?」

「地上へ行く」

5年ぶりに彼女は剣を帯び、旅の装束に身を包んでいた。

「バカな。
お前が行ってどうする。
死にに行くようなもんだ。」

「先生、この子ね。
あの日以来、ずっと笑ったことがないんだ。
ずっとね・・・。
これ以上、奴らに好き勝手させておけば、
世界中にこの子と同じ子供たちが増える。
私の力ではどうにもならないかもしれない。
母さんと同じように、それは闇の道かもしれない。
でもね、この子がいる限り、闇の中でも照らしてくれる。
そして、いつかこの子の笑顔を
奴らから取り戻せる日が来ると信じてる。」

「そうか、親子二代同じ道を行くか・・・。
藤緒もね、お前と同じことを言っていたよ・・・。
分かったよ。好きにするがいいさ。」

そういうと、マシラは少女に向けて優しい笑顔を作る。

「おいで、お嬢ちゃん。
お名前はなんて言うんだい?」

「抱月」

あの日藤緒に助けられた少女はか細い声で答えた。

「月を抱いて暁を待つ・・・か。
これも何かの縁かもしれないねぇ。」

マシラは深い皺をいっそう深くして、少女に微笑みかける。


そのときだった。
戸口に立った人影がフォンイに声をかけてきたのは。

「1人で行くつもりか?」

「隊長!どうしてここに!?」

「隊長代理だ。」

声の正体は翔竜士だった。

「私が夕べ連絡しておいたんだよ。
お前が突然、明日来ると言った後にね。
どうせこうなるとは思っていたんだ。
何年、お前と一緒にいたと思ってるんだい。」

マシラは人の悪そうな笑顔をフォンイに向ける。

「お前が来るはずだから、代理の字は残しておく。
副長はそう言って待っていたんだ。」

「十夜!」

岩のような大男が翔竜士の傍に花崗岩のように立ち尽くしている。

「あんた1人で行けるわけないでしょ。」

「そうよ、それに藤緒隊長からフォンイをまかせるって言われたしね。」

「メイフィ!五鈴!あなたたち、全員・・・生きてたのね・・・」

「簡単に殺さないでよー。殺されても死なないわよ、私は。いたたたた。」

「雛の軽口も相変わらずよ。」

そういってメイフィが雛の腕をつねる。

「そういうことだ。フォンイ隊長。
藤緒の想いを継ぐのはお前しかいない。」

翔竜士はそう言って、口の端を曲げて微笑んだ。

「分かりました。
あなたたち、『死なない覚悟』はできてますか?」

全員がうなずく。
そしてフォンイは抱月を抱きしめ言った。

「必ず生きてあなたのところに帰ってくるわ。」


こうして、彼らは旅立った。
地上が完全に闇に閉ざされてようとも
月の光がその道を照らし続けることを信じて・・・。
ごめんなさい!
本当いろいろごめんなさい!!!
なんか詰め込みすぎました!
しかも、3話までひっぱっといてこれかよ!って感じです!!!

そしてみなさんには、お詫びしなければなりません。
みなさんの想像に委ねる部分が大きいことと、
身内やこのブログの常連さんしか分からないようなネタ振りなことです。
本当に申し訳ありません。
翔竜が言う「ベルを知らない人でも分かるように」という
スタンスを見習いたいものです。

今日仕事中も、もうダメ。書けない。ダメなんて思い続けて
ここでやめようかななんて思いましたが、最後まで書きました。
うわーーーん、もうこれが限界です。
もう泣きそうです!

「地上へ行く意味」というのを物語にしたかったのと、
5代目を抱月という名前にしたから、これを絡めないとと思ったのが運の尽き。

最初、フォンイ=梁紅玉から中国女将軍つながりで
木蘭にしようとしましたが使われてダメ
次に花の名前つながりで、桂花(金木犀の中国名)に
しようとしましたが、これもダメ。

最終的に生まれたのが抱月(ほうげつ)ちゃんです!

hougetu.jpg

「抱月」は白い椿の種類の1つです。

t-hogetsu.jpg

こんなの。
椿でググってたら、いろいろな種類の名前が出てきて
コレダ!ってことで決めちゃいました。

今回は本当、自分の限界をひしひしと感じました。
ただ書くことで分かりました。
恥ずかしいですが、自分の書いたものとして世に送り出します。

少しでも楽しんでいただける方がいらっしゃいましたら幸いです。
おつきあいありがとうございました。
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